体育のある日の朝。
ひろゆき先生は、いつものように教室を見回していた。
「たいそうぎ、もってきた人ー」
元気よく手が上がる中で、としやくんの手だけが、膝の上で止まったままだった。
「……どうした?」
としやくんは、少し迷ってから、小さな声で言った。
「きのう、ちゃんとだしたんだけど……
おかあさんが、せんたく……わすれちゃって……」
その言葉を聞いた瞬間、
ひろゆき先生の中で、何かが“ピン”と張りつめた。
(あ、これ……)
「としやくん」
少し、声が強くなった。
「人のせいにしないの。
忘れ物は、自分の責任だよ」
教室が、しんと静かになる。
としやくんの目が、みるみるうちに潤んでいった。
「……ちゃんと、だしたのに」
そのつぶやきは、ひろゆき先生の耳には、届かなかった。
結局、としやくんは体育を見学することになった。
マットの横に座り、みんなの跳び箱を、黙って見ていた。
ひろゆき先生は、体育を進めながら、何度かとしやくんの方を見た。
けれど――声は、かけなかった。
(あとで、フォローしよう)
そう思いながら、結局、その「あと」は来ないまま、一日が終わった。
次の日の朝。
机の上に置かれた連絡帳を開いたひろゆき先生は、手を止めた。
「昨日は体操服を忘れて申し訳ありません。
私の洗濯のミスです。
悪いのは私たちで、としやは悪くありません。
としやは、先生に『人のせいにしない』と言われ、少し傷ついています。
よろしければ、話を聞いていただけますか。」
読み終えたあと、ひろゆき先生は、深く息を吐いた。
(……完全に、俺のミスだ)
「忘れ物=本人の責任」
そう教えなきゃ、と思った。
でも、“事実”をちゃんと聞く前に、
“大事な気持ち”を、見落としてしまった。
朝の会が終わったあと、ひろゆき先生は、としやくんに声をかけた。
「としやくん、ちょっといい?」
としやくんは、少し緊張した顔で、先生を見た。
ひろゆき先生は、しゃがんで、目線を合わせる。
「きのうのこと、先生が悪かった。
ちゃんと話を聞かないで、叱ってしまった」
としやくんの目が、少し大きくなる。
「としやくんが、体操服を出してたこと。
それ、先生、ちゃんと分かってなかった。ごめんなさい。」
しばらく、沈黙があった。
それから、としやくんが、ぽつりと言った。
「……ぼく、うそ、ついてない」
「うん。先生も、そう思ってる」
その瞬間、としやくんの肩から、ふっと力が抜けた。
「ありがとう、せんせい」
その声は、小さかったけれど、まっすぐだった。
その日の体育。
としやくんは、いつもより少し大きく腕を振って、走っていた。
ひろゆき先生は、その姿を見ながら思った。
(子どもに謝れるかどうか。
それも、教師の大事な仕事なんだな)
完璧じゃなくていい。
間違えたら、立ち止まって、やり直せばいい。
そうやって、学校生活は、また一日、動き出していく。
。※この文章の作成には一部AIを用いております
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